概要
システム思考(Systems Thinking)は、物事を個別の要素の集合としてではなく、要素同士が影響し合う「システム(全体像)」として捉える思考法です。「木を見て森も見る」アプローチであり、問題の表面的な対処ではなく、根本的な構造やパターンの解決を目指します。
いつ使うか
- 複雑な問題が絡み合っていて解決が難しい時
- 「あちらを立てればこちらが立たず」というトレードオフがある時
- 同じ問題が何度も繰り返される時(いたちごっこ)
説明
基本概念
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因果ループ図(Causal Loop Diagram)
- 要素間の関係を矢印で結び、どのように影響し合っているかを図解します。
- 「+(正の影響)」:Aが増えるとBも増える。
- 「-(負の影響)」:Aが増えるとBは減る。
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フィードバック・ループ
- 自己強化型ループ(拡張): 雪だるま式に増幅する(例:口コミで売上が伸びる、不安が不安を呼ぶ)。
- バランス型ループ(安定): 一定の状態を保とうとする(例:体温調節、在庫調整)。
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遅れ(Delay)
- 原因から結果が出るまでの時間差。これを見落とすと、対策を打ちすぎて逆効果になることがあります(例:シャワーの温度調節)。
氷山モデル
物事を4つの階層で捉えます。
- 出来事(Events): 目に見えている現象(例:ミスが起きた)。
- パターン(Patterns): 繰り返される傾向(例:毎月月末にミスが増える)。
- 構造(Structures): パターンを生む仕組み(例:月末に業務が集中する評価制度)。
- メンタルモデル(Mental Models): 構造を支える意識や前提(例:「忙しいのは良いことだ」という思い込み)。 システム思考では、下の階層(構造やメンタルモデル)に働きかけることで根本解決を図ります。
使用例
例:交通渋滞の解消
- 出来事: 道が混んでいる。
- 対処療法(非システム思考): 道路を拡張する。
- システム思考的分析:
- 道路を拡張する → 渋滞が減る(一時的) → 利便性が上がり、車を使う人が増える(自己強化ループ) → 結果、再び渋滞する。
- 根本解決策: 公共交通機関を充実させる、ロードプライシング(課金)を導入するなど、構造を変えるアプローチをとる。
AI活用
AIに因果ループを分析させるプロンプトです。
プロンプト例
# 命令書
以下の問題について、システム思考の観点から「因果ループ」を分析してください。
# 問題
[ここに問題を入力:例:残業を減らすと売上が下がる]
# 分析項目
1. 関係している要素の洗い出し
2. 悪循環(自己強化ループ)の構造はどうなっているか?
3. 根本的な解決ポイント(レバレッジポイント)はどこか?