概要
ブレインストーミング(Brainstorming)は、複数の人が集まって自由にアイデアを出し合うアイデア発想技法です。1930年代に広告代理店BBDOのアレックス・F・オズボーンが考案しました。
いつ使うか
- 新しいアイデアが必要な時
- 問題解決のアイデアを広く集めたい時
- チームで創造的なアイデアを出し合いたい時
- 既存のアイデアを拡張したい時
説明
基本ルール(4原則)
ブレインストーミングには、効果を最大化するために考案者オズボーンが提唱した4つの基本ルールがあります。参加者全員がこれを守ることが成功の鍵です。
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批判厳禁 (Judgment is ruled out)
- 出されたアイデアに対して批判や評価をしない。「しかし」「でも」「それは無理」といった否定的な発言は禁止です。評価は後で行います。
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自由奔放 (Free-wheeling)
- 突飛なアイデア、馬鹿げたアイデアこそ歓迎されます。常識にとらわれない自由な発想が、新しい解決策への糸口になります。
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質より量 (Quantity wanted)
- 良いアイデアを出そうとするより、とにかくたくさんのアイデアを出すことを優先します。量が質を生み出します。
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結合改善 (Combination and improvement)
- 他人のアイデアに便乗(乗っかり)することを推奨します。別々のアイデアを組み合わせたり、誰かのアイデアを発展させたりして、新しいアイデアを生み出します。
実施手順
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準備
- 参加者: 3〜10人程度(異なる背景を持つ人が集まると良い)
- 時間: 15〜60分程度
- 必要なもの: ホワイトボード、マーカー、付箋(ポストイット)、ペン
- 役割分担: 進行役(ファシリテーター)と記録係を決める
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実施
- ルールの共有: 開始前に4つの基本ルールを全員で確認する(ホワイトボードに書いておくのがベスト)
- テーマの提示: 何についてアイデアを出すのか明確にする
- アイデア出し: 自由に発言し、記録係がすべてホワイトボード等に書き留める(付箋を使う場合は各自が書いて貼る)
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整理
- 出されたアイデアを分類・整理する(KJ法などが有効)
- 類似したアイデアをまとめる
- 実現可能性や効果を評価する(※この段階で初めて評価を行う)
よくある失敗と対処法
失敗1:批判が出てしまう
- 対処法:ファシリテーターが即座に介入し、「今は評価する時間ではありません」「どんなアイデアも歓迎です」とルールを再確認する。
失敗2:アイデアが出ない・沈黙が続く
- 対処法:ウォーミングアップとして簡単なテーマ(例:「しりとり」や「この部屋にある赤いもの」)から始める。または、数分間個人で考える時間を設けてから発表する。
失敗3:同じようなアイデアばかり出る
- 対処法:視点を変える質問(トリガー)を投げかける。「もし予算が無限にあったら?」「もし明日地球が滅びるとしたら?」など、制約を外したり極端な状況を設定したりする。
失敗4:声の大きい人の意見ばかり採用される
- 対処法:付箋を使って各自が書く方式(ブレインライティング的な手法)を取り入れ、全員が平等にアウトプットできる環境を作る。
失敗5:時間が足りない・議論が発散したまま終わる
- 対処法:アイデア出しの時間と、整理・評価の時間を明確に分ける。今回は「出し切る」ことだけに集中すると割り切るのも手。
使用例
例1:新商品のアイデア出し
テーマ:「若い世代に人気の新しい飲み物のアイデア」
実施
- 参加者:5人(マーケティング、開発、デザイン、営業、企画)
- 時間:30分
- 出たアイデア:50個
結果(抜粋)
- 「朝の時間を大切にする飲み物」
- 「SNS映えする見た目の飲み物」
- 「健康とおいしさを両立した飲み物」
- 「環境に配慮したパッケージの飲み物」
その後
- アイデアを分類し、「SNS映えする見た目」と「健康」を組み合わせた商品コンセプトを開発。
例2:問題解決のアイデア出し
テーマ:「オフィスの会議室が足りない問題を解決する方法」
実施
- 参加者:8人(各部署の代表)
- 時間:20分
- 出たアイデア:40個
結果(抜粋)
- 「会議室を予約制にする」
- 「リモート会議を増やす」
- 「オープンスペースを活用する(立ち会議)」
- 「会議の時間を半分にする」
その後
- 実現可能性と即効性で評価し、「立ち会議スペースの設置」と「会議時間の短縮ルール」を試験導入。
例3:創作のアイデア出し
テーマ:「新しい小説のテーマと設定」
実施
- 参加者:3人(作家、編集者、読者代表)
- 時間:45分
- 出たアイデア:60個
結果(抜粋)
- 「AIと人間の恋愛」
- 「時間が逆行する世界」
- 「嘘しかつけない主人公」
- 「過去と未来の自分が入れ替わる」
その後
- 「時間が逆行する世界」の設定に「嘘しかつけない主人公」の要素を組み合わせ、プロット作成へ移行。
AI活用(一人ブレインストーミング)
生成AI(ChatGPT, Claude, Geminiなど)を活用することで、一人でも効果的なブレインストーミングが可能です。壁打ち相手として、あるいは異なった視点を持つ参加者としてAIを利用します。
以下のプロンプトをコピーして使用してください。
プロンプト例1:AIに参加者になってもらう
# 命令書
あなたは優秀なアイデアマンです。以下のテーマについて、ブレインストーミングの4原則(批判厳禁、自由奔放、質より量、結合改善)を守りながら、アイデアを10個出してください。
# テーマ
[ここにテーマを入力:例:若い世代に人気の新しい飲み物のアイデア]
# 条件
- 常識にとらわれないユニークなアイデアを含めてください
- 既存のアイデアとは異なる視点を持ってください
- 簡潔に箇条書きで出力してください
プロンプト例2:AIにファシリテーターになってもらう
# 命令書
私はこれからブレインストーミングを行いたいと思います。あなたはプロのファシリテーターとして振る舞ってください。
# 手順
1. まず私にテーマを尋ねてください。
2. 私がアイデアを出すたびに、それを肯定し、さらに広げるような質問や、視点を変えるヒント(トリガー)を投げかけてください。
3. 私のアイデアに対して批判や評価はしないでください。
4. 私が「終了」と言うまで、このやり取りを続けてください。
5. 最後に、出たアイデアを整理して提示してください。